PEIとは?

PEI(ポリエーテルイミド、一般的にはサビック社の商標である「ウルテム」として広く知られる)は、非晶性のスーパーエンジニアリングプラスチックです。分子構造内に剛直なイミド結合と柔軟性を付与するエーテル結合を持つため、優れた機械的強度、高耐熱性、そして非晶性樹脂特有の高い寸法安定性を高い次元でバランスよく備えています。また、難燃剤を添加無しで極めて高い難燃性と低発煙性を有する点も大きな特徴です。

PEIの代表的な特徴と物性(スペック概要表)

項目一般的な代表値・特徴
組成・構造(化学式)(C37H24N2O6)n
比重1.27 ~ 1.28
耐熱温度連続使用温度:約170℃ / ガラス転移点(Tg):約215℃(明確な融点は持たない非晶性)
燃焼性UL94 V-0(難燃剤未添加)
機械的性質引張強度:約105 MPa、曲げ強度:約160 MPa(非晶性樹脂として最高峰の強度・弾性率)
耐薬品性酸、アルコール、炭化水素(ガソリンなど)に強い。一方で、一部のハロゲン化炭化水素、ケトン類、強アルカリには侵される。
成形温度の目安シリンダー温度:340〜400℃ / 金型温度:130〜180℃
成形難易度★★★★☆
溶融粘度が高く流動性が低いため、高い射出圧力が必要となること、また内部の残留応力によるクラック発生のリスクを抑える制御が必要。
市場価格★★★★☆
高い耐熱性と電気的特性を備える特殊樹脂であり、一般的なエンプラと比較して高価な部類に属する。

特筆すべき特徴・設計時の注意点

  • 溶融粘度が高く流動性が低い: 薄肉製品や複雑な形状では充填不足(ショートショット)が起きやすいため、高い射出圧力および適切なゲート設計が求められます。無理な充填は残留応力を高める原因となります。
  • 残留応力と環境応力クラック: 成形時に発生した内部の残留応力が原因となり、後工程での切削加工時や、特定の溶剤・薬品に触れた際にクラック(環境応力割れ)を引き起こすことがあります。必要に応じて成形後にアニール処理(歪み抜き)を行います。
  • 乾燥条件の厳守: 吸水性があるため、水分を含んだまま高温成形を行うと加水分解を起こし、分子量低下(脆化)やシルバー、気泡などの外観不良に直結します。成形前には高温(例:130〜150℃)での除湿乾燥が必須です。
  • 高温金型の維持: ガラス転移点(215℃)が高いため、金型温度を130〜180℃に維持する必要があります。適切な断熱対策と、金型内の温度均一化が成形収縮と歪みの低減に不可欠です。

主な用途・採用される業界

  • 電気・電子分野: コネクタ、リレー部品、スイッチ部品、プリント基板治具(高絶縁性、耐熱性)
  • 宇宙航空・鉄道分野: 航空機内装部品、照明器具フード、ダクト(UL94 V-0の難燃性と低発煙・低毒性ガスの要求)
  • 医療・食品分野: 医療用滅菌トレイ、分析機器部品、調理器具(耐加水分解性、食品衛生性)
  • 自動車分野: ランプソケット、ヒューズブロック、スラストワッシャー

よくあるご質問(FAQ)

PEI(ポリエーテルイミド / ウルテム)の成形品において、後からクラック(ひび割れ)が発生するのを防ぐ成形上のアプローチはありますか?

製品内の「残留応力」を低減させることが最重要です。射出速度や保圧を過度に高く設定しすぎないこと、シリンダー温度および金型温度を高めに設定して樹脂の流動性を補うことで、無理な応力が製品内に残るのを緩和できます。また、製品設計段階でのシャープエッジ(鋭角)を避けるアール(R)付与も効果的です。

PEI成形において、ガス逃げ(ガスベント)の設計が重要視される理由は何ですか?

PEIは340℃以上の高温域で成形されるため、微量な揮発成分や滞留ガスが発生しやすくなります。流動性が低い樹脂特性と相まって、金型内のガス逃げが不十分だと、ガスが製品末端に閉じ込められて断熱圧縮され、製品の焦げ(ガス焼け)や充填不足を引き起こします。金型の適切な箇所に正確なガスベントを配置することが必須となります。

スーパーエンプラ成形は森重製作所へ

PEI(ポリエーテルイミド / ウルテム)はその優れた機械的・電気的特性から多分野で重宝されますが、高い溶融粘度に起因する残留応力の制御や徹底した乾燥管理など、成形条件の設定には熟練の技術が必要です。森重製作所では、精密な温度管理と最適な型設計により、歪みの極めて少ない高品質なPEI成形品をご提供します。